事業所得と給与所得の違いをわかりやすく解説
多くの人は「給与所得=会社からの給料」だけを基盤に生活していますが、近年では副業解禁やリモートワークの普及により、個人でも事業所得を得られる環境が整いつつあります。
しかし、実際には 事業所得と給与所得の違いを正しく理解している人は意外と少ない のが現実です。
本記事では、
- 事業所得とは何か
- 両者を分ける判断基準
- 給与所得の特徴と安定性
- 両者の違い
- 結局どちらを優先すべきか?
- 最強は「給与の安定 × 事業の成長性」の組み合わせ
を、初心者にも分かりやすく解説します。
事業所得とは?
事業所得の定義
事業所得とは、簡単に言えば「自分で事業を行い、その結果として得られる利益」を指します。
会社から受け取る給料とは異なり、自分が主体となってビジネスを運営し、売上を上げ、その売上から経費を差し引いた“純粋な利益”が事業所得になります。
国税庁では、事業所得を「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得」と定義しています。
つまり、単発で受け取った謝礼や臨時収入ではなく、継続性・独立性・収益性のある活動が前提となります。
事業所得のポイントは以下の 3 つです。
- 売上を自分で作る必要がある
顧客からの支払い、クライアントからの報酬、ネット販売の売上など、自ら収入源を作り出すことが求められます。 - 経費を使って所得を調整できる
事業に必要な支出(パソコン、通信費、教材費、ソフト代、交通費など)を経費として差し引けるため、税金面での自由度が高い点が大きな特徴です。 - 成果が収入に直結する
どれだけ稼げるかは「スキル × 努力 × ビジネスモデル」でほぼ決まり、給与のように上限が決まっていません。
このように、事業所得は自由度が高く、成長性のある収入形態ですが、その分“自分の実力が収入に直結する”という難しさもあるため、給与所得とは根本的に性質が異なります。
どんな収入が事業所得になるのか
事業所得に分類される収入には幅広い種類があります。
現代では副業の選択肢が多様化しており、以下のような活動が事業所得の代表例です。
- 副業フリーランスの収入
デザイン、プログラミング、動画編集、ライティング、翻訳など。 - 個人事業としての売上
コンサル、オンライン講座、スクール運営、占い、サロン経営など。 - YouTube や SNS の収益
広告収入、企業案件、メンバーシップ収益。 - 物販(せどり、ネットショップ)
Amazon・メルカリ・BASE 等での販売利益。 - 写真素材、デジタルコンテンツ販売
note、Brain、Kindle 出版なども含まれることが多い。
これらに共通するポイントは「会社に依存せず、自分の活動によって得られる収益」であることです。
副業で月 3〜5 万円でも継続していれば事業所得に該当するケースがあり、規模の大きさよりも“継続性と事業性”の方が重要視されます。
事業所得と判断されるための基準
国税庁は、ある収入が「事業所得か雑所得か」を判断するために、以下の基準を明確に示しています。
この基準に該当しているかどうかで、税務上の扱いが大きく変わります。
① 営利性(利益を出す意思があるか)
ただの趣味活動ではなく、収入を得る目的で取り組んでいるかどうかです。
「利益を生み出す意図」を示せる活動が求められます。
② 継続性・反復性(続けて行っているか)
単発ではなく、定期的に仕事を受けたり商品を販売したりしていますか。
月 1 回でも継続すれば“反復性あり”と判断されることがあります。
③ 独立性(誰かの指揮命令を受けていない)
会社の社員ではなく、自分の判断で仕事を受け、価格設定をし、納品を行っていますか。
④ 事業規模(ある程度の活動規模があるか)
売上、取引回数、設備、仕入れの有無、活動時間などが重要です。
ただし、「規模が小さい=事業ではない」ではなく、小さくても継続性が強ければ事業と認められることが多いです。
これらの要件を満たしていれば、比較的小さな副業でも事業所得となります。
逆に、条件に当てはまらない場合は「雑所得」と判断され、経費の扱いや節税の自由度が制限されることがあります。
給与所得とは?
給与所得の定義(会社から受け取る収入)
給与所得とは、会社や団体などに雇用され、労働の対価として受け取る給料・賞与を指します。
会社員やアルバイト・パートなど、雇用契約に基づいて働き、その報酬として毎月支払われる収入が該当します。
特徴として重要なのは「雇用契約のもとで働く」という点です。
就業時間・仕事の内容・責任範囲は会社によって決められ、働く側はそのルールに従って労働力を提供します。
その対価として、毎月ほぼ一定額の給与が安定して支払われる仕組みです。
給与所得は日本で最も一般的で、最も安定した収入形態であり、生活基盤を作る上で欠かせません。
さらに税金面では「給与所得控除」という大きな優遇があり、個人事業主にはない税制上のメリットも存在します。
給与所得の特徴(安定性・税務の簡単さ・控除)
給与所得には、事業所得にはない以下のメリットがあります。
① 収入が安定している
毎月決まった給与が支払われるため、生活設計がしやすく、精神的安定につながります。
景気が悪くても、いきなり収入が 0 になることはほとんどありません。
② 税務処理が圧倒的に簡単
会社が年末調整を行ってくれるため、自分で確定申告をする必要がないケースが多い。
これは非常に大きなメリットで、事業所得者の複雑な会計処理とは対照的です。
③ 給与所得控除がある
会社員には「給与所得控除」という自動的に適用される大きな控除があります。
これにより、事業所得と比べて税負担が軽くなるケースもあります。
④ 社会保険が強い
厚生年金・健康保険など、会社が半分負担してくれるため手厚い保障を受けられます。
事業所得のような自由度はないものの、「安定 × 税務の簡便さ × 社会保障」という強力なメリットが給与所得にはあります。
事業所得と給与所得の違い
収入の仕組みの違い(事業所得=売上−経費/給与所得=給与所得控除)
収入の構造は以下のように大きく異なります。
● 事業所得の計算式
売上 − 経費 = 事業所得(課税対象)
必要な支出を経費として差し引けるため、税金をコントロールしやすい点が特徴です。
● 給与所得の計算式
給与 − 給与所得控除 = 課税所得
会社員は経費を自分で計上できませんが、その代わりに自動的に控除が適用されます。
この違いが、節税のしやすさ・税務上の自由度・収入の伸び方に強く影響します。
安定性 vs リスク(給与=安定/事業=波が大きい)
給与所得の最大の特徴は「毎月必ず同じ額の給料が入る」という安定性です。
これは精神的な安心感をもたらし、生活基盤を作る上で非常に重要です。
一方、事業所得は月ごとの収入変動が大きいのが一般的です。
月 20 万 → 月 5 万 → 月 40 万 といったように、波が激しく、安定性は低めです。
しかし、その分「伸びしろ」は圧倒的に事業所得の方が大きいです。
つまり、リスクとリターンのバランスが全く違う収入構造であることを理解しておく必要があります。
成長性・収入の上限(給与=上限あり/事業=上限なし)
給与所得には会社の評価制度・昇給制度があり、基本的に上限が存在します。
どれだけ頑張っても、年収が 1.5 倍・2 倍になるには時間がかかり、限界があります。
一方、事業所得には収入上限がありません。
売上を伸ばせば伸ばすほど収入が増え、スキル次第で一気に年収が数倍になることも珍しくありません。
- YouTuber が年収 1000 万円を超える
- プログラミング副業で月 50 万
- 物販で月 20〜30 万安定
など、給与所得では考えられない速度で収入が増える可能性があります。
税金の違い・節税余地(給与所得は控除少/事業所得は経費・青色申告で節税しやすい)
給与所得
- 経費として落とせるものがほぼない
- 給与所得控除はあるが、節税の自由度は低い
事業所得
- 必要な支出を経費にできる
- 青色申告で最大 65 万円控除
- 家事按分で生活費の一部も経費に
- 節税の自由度が高く、可処分所得が増える
給与所得と事業所得では、使える税務戦略がまったく違うため、「節税」という観点では事業所得が圧勝です。
まとめ
給与所得と事業所得はどちらが優れているという話ではありません。
性質がまったく違うため、本来は比較の対象ではなく“組み合わせる”ものです。
- 給与所得=生活の安定と精神的余裕
- 事業所得=収入の成長性と自由度の高さ
この 2 つを同時に持つことで、
- 投資に回せる金額が増える
- 将来のリスク耐性が圧倒的に高まる
- キャリアの選択肢が広がる
- 収入源が複数になることで不安が減る
という強力なメリットが生まれます。
結論として、
給与所得で安定を作り、事業所得で収入の伸びしろを作り、この組み合わせが現代における最強の収入戦略です。
