Thymeleafとは?Spring Bootで使うテンプレートエンジンを基礎から解説
Spring Boot を使った Web アプリケーション開発において、
Thymeleaf(タイムリーフ)は非常によく使われるテンプレートエンジンの一つです。
HTML に近い自然な記法でサーバーサイドのデータを埋め込めることから、
「フロントエンドとバックエンドの橋渡し役」として多くの現場で採用されています。
一方で、
- Thymeleaf とはそもそも何なのか
- テンプレートエンジンとは何をする仕組みなのか
- JSP や Freemarker と何が違うのか
th:textやth:eachは何をしているのか
といった点が曖昧なまま使っている人も少なくありません。
本記事では、Thymeleaf を単なる記法集としてではなく、
- テンプレートエンジンとしての役割
- Thymeleaf が選ばれる理由
- 実務で必須となる基本構文とその意味
を中心に、技術的な視点から体系的に整理します。
Thymeleafとは何か
Thymeleafはサーバーサイドテンプレートエンジン
Thymeleaf(タイムリーフ)とは、Java を中心としたサーバーサイドアプリケーションで利用されるテンプレートエンジンです。
主に Spring Boot / Spring MVC と組み合わせて使用され、サーバー側で HTML を動的に生成する役割を担います。
サーバーサイドレンダリング(SSR)において、Thymeleaf は Controller から渡されたデータ(Model)を HTML テンプレートに埋め込み、最終的な HTML を生成します。
ブラウザに返される時点では、Java の変数や制御構文はすでに評価されており、純粋な HTML として表示される点が特徴です。
Thymeleaf は Java コードそのものを HTML に書き込むのではなく、th:text や th:each といった独自属性(th 属性)を使ってテンプレートを拡張します。
この設計により、HTML の可読性を保ったまま、サーバーサイドの処理を表現できます。
本質的に Thymeleaf は
「データを受け取り、HTML を生成する仕組み」
であり、フロントエンドフレームワークの代替ではありません。
あくまで View レイヤーを担当する技術であり、表示ロジックと業務ロジックを分離するための重要な役割を持っています。
テンプレートエンジンとは何か
テンプレートエンジンの役割と基本概念
テンプレートエンジンとは、テンプレートとデータを組み合わせて、動的なコンテンツを生成する仕組みです。
Web 開発においては、HTML をベースに動的な表示を実現するために使用されます。
静的 HTML は、内容が固定されており、ユーザーや状況によって表示を変えることができません。
一方、テンプレートエンジンを利用すると、以下のような処理が可能になります。
- ユーザー名や一覧データの表示
- 条件による表示・非表示の切り替え
- 繰り返し表示(リスト・テーブル)
テンプレートエンジンの基本的な流れは以下の通りです。
テンプレート(HTML) + データ(Model) → 最終HTML
MVC アーキテクチャでは、テンプレートエンジンはViewの役割を担います。
Controller が処理結果を Model に格納し、その Model を View(テンプレート)が受け取り、画面として表現します。
この分離によって、
- ビジネスロジックは Controller / Service
- 表示ロジックは View
という責務分担が明確になり、保守性の高い設計が可能になります。
Thymeleafとテンプレートエンジンの関係
Thymeleaf は数あるテンプレートエンジンの中の一つに過ぎません。
Java 系では、以下のようなテンプレートエンジンが存在します。
- JSP
- Freemarker
- Velocity
- Thymeleaf
JSP は Java コードを HTML 内に直接記述できる反面、可読性が低下しやすく、フロントエンドとの分業が難しいという問題がありました。
Freemarker や Velocity は独自構文が多く、HTML との乖離が生まれやすいという特徴があります。
Thymeleaf が評価されている理由は、「HTML を HTML のまま書ける」という点にあります。
th:*属性を除けば、通常の HTML として成立するため、デザイナーが単独で編集することも可能です。
Spring Boot が Thymeleaf を標準的に採用している理由もここにあります。
設定が少なく、Spring MVC と自然に連携でき、学習コストと実務コストのバランスが良いため、多くのプロジェクトで採用されています。
Thymeleafの主な特徴
HTMLとしてそのまま成立するナチュラルテンプレート
Thymeleaf 最大の特徴は、ナチュラルテンプレートと呼ばれる設計思想です。
これは、Thymeleaf のテンプレートが「テンプレートエンジンを通さなくても HTML として成立する」ことを意味します。
以下のようなテンプレートは、ブラウザで直接開いても破綻しません。
<p th:text="${message}">Hello World</p>Thymeleaf が動作しない環境では Hello World が表示され、サーバー経由では ${message} の値に置き換わります。
この仕組みは、フロントエンドとバックエンドの分業を非常に容易にします。
HTML 構造を壊さずにロジックを埋め込めるため、保守性が高く、レビューもしやすくなります。
Spring Bootとの高い親和性
Thymeleaf は Spring MVC と非常に高い親和性を持っています。
Controller で Model に値を詰めるだけで、テンプレート側から簡単に参照できます。
Java:
@GetMapping("/hello")
public String hello(Model model) {
model.addAttribute("name", "Taro");
return "hello";
}Html:
<p th:text="${name}"></p>設定も最小限で済み、Spring Boot では依存関係を追加するだけで即利用可能です。
フォーム送信、バリデーション、エラーメッセージ表示なども自然に連携できます。
安全性と可読性を意識した設計
Thymeleaf はセキュリティ面にも配慮されています。th:text を使用した場合、HTML エスケープが自動で行われ、XSS のリスクを低減できます。
<p th:text="${userInput}"></p>意図的に HTML を出力したい場合は th:utext を使用しますが、
その分リスクがあることを明示的に理解した上で使う設計になっています。
また、式評価が明確で、可読性が高い点も特徴です。
複雑なロジックをテンプレートに書かせない設計思想が、長期運用に向いています。
Thymeleafの基本構文とよく使う属性
th:text ― テキストの出力
th:text は、最も基本的な属性で、テキストを出力します。
<span th:text="${username}">dummy</span>HTML の中身は Thymeleaf によって完全に置き換えられます。${} は Spring Expression Language(SpEL)で、Model の値を参照します。
th:each ― 繰り返し処理
リスト表示では th:each を使用します。
<li th:each="item : ${items}" th:text="${item}"></li>item はループ内でのみ有効な変数で、スコープが明確です。
テーブルや一覧画面では必須の構文です。
th:if / th:unless ― 条件分岐
条件付き表示には th:if / th:unless を使います。
<p th:if="${isLogin}">ログイン中</p>
<p th:unless="${isLogin}">未ログイン</p>boolean 評価が直感的で、可読性が高いのが特徴です。
th:href / th:src ― URL・リソース指定
URL 生成には @{} 構文を使用します。
<a th:href="@{/users/{id}(id=${user.id})}">詳細</a>相対パス問題を避け、安全にリンクを生成できます。
th:value / th:field ― フォーム連携
フォームとの連携では th:field が便利です。
<input type="text" th:field="*{name}" />Spring の Form オブジェクトと自動でバインディングされ、
エラー表示や再描画も簡単に実装できます。
Thymeleafはどんな場面に向いているか
Thymeleafが向いているケース
Thymeleaf は、サーバーサイドレンダリング(SSR)を前提とした Web アプリケーションにおいて、その強みを最も発揮します。特に、画面の正確性・一貫性・保守性が重視される場面では、有力な選択肢となります。
代表的なのが、管理画面や業務系システムです。
ユーザー権限による表示制御、フォーム入力、一覧・詳細画面の切り替えなど、サーバー側で状態管理を行うケースでは、Thymeleaf のシンプルな式評価と Spring MVC との密な連携が大きなメリットになります。
また、Java / Spring Boot を中心とした構成では、導入コストの低さも魅力です。特別な設定やビルド工程を追加せず、Controller → Model → View という自然な流れで画面を構築できます。
そのため、バックエンドエンジニア主体で画面を実装するプロジェクトとも相性が良いと言えます。
さらに、画面数が多く、長期間運用されるシステムでは、HTML に近い記法による可読性の高さが保守性に直結します。
将来的な仕様変更や人員交代があっても、テンプレート構造を把握しやすい点は、実務上大きな利点です。
Thymeleafが向いていないケース
一方で、Thymeleaf が必ずしも最適とは言えないケースも存在します。
代表例が、React や Vue を用いた SPA(Single Page Application)中心の構成です。
SPA では、画面描画の主導権はフロントエンド側にあり、サーバーは JSON を返す API としての役割に徹します。このようなアーキテクチャでは、HTML をサーバーで生成するテンプレートエンジン自体が不要になります。
また、フロントエンドとバックエンドを完全に分離した構成や、
API + フロントエンド分業を前提とした開発体制でも、Thymeleaf は適しません。
この場合、画面はフロントエンドフレームワーク側で完結し、サーバー側で View を持つ意味が薄くなります。
無理に Thymeleaf を組み込むと、
- 表示ロジックの二重管理
- 技術スタックの複雑化
- 開発体験の悪化
といった問題が生じる可能性があります。
そのため、「Java だから」「Spring Boot だから」という理由だけで選ぶのではなく、全体アーキテクチャとの整合性を基準に判断することが重要です。
まとめ|Thymeleafを理解するために
Thymeleaf は、サーバーサイドで HTML を生成することを前提としたテンプレートエンジンであり、特に Spring Boot を中心とした SSR 構成において、その設計思想が最も活きます。
HTML に近い自然な記法と、Java 側の Model をそのまま扱える点は、業務系システムや管理画面のように「安定性と保守性」が重視される場面で大きな強みになります。
一方で、Thymeleaf は万能な技術ではありません。
SPA を前提とした構成や、API とフロントエンドを明確に分離するアーキテクチャでは、テンプレートエンジン自体が不要となり、別の技術選択の方が合理的です。
重要なのは、「流行っているかどうか」ではなく、アプリケーションの構成・チーム体制・運用期間に対して適切かどうかという視点で判断することです。
Spring Boot で画面を持つアプリケーションを開発するのであれば、Thymeleaf は今でも十分に理解しておく価値のある、実務的な技術だと言えるでしょう。
